浅治郎的「分づきのすすめ」

近年の健康志向もあり「お米の分づき精米」が注目を浴びています。ただ、分づきというだけで一体どんなお米なのか実態はあまり正確に広まっていないようです。
ここで、20年以上分づき精米の米を食べてきて積み重ねた経験を皆様の食生活の参考にしていただければと思います。

「分づき米」ってなに?
分づき見本左から白米、7分、6分、5分、3分、玄米

収穫した「稲の種」からモミ殻を取り除いたものが玄米です。その玄米の表皮の糠層をある程度取り除いた状態のお米のことを「分づき精米」と言います。取り除く割合により白米(十分)から一分まで便宜的に数字による段階表現します。ただ、その年の天候条件で作柄が違いますのでヌカ層の残り具合はまちまちになります。例えば「5分づきはこのくらい」という感じで使っていただいたほうが実態にあっていると思います。

同じ産地、生産者、品種でも年によりヌカ層の厚さや硬さが微妙に違いますので、毎回出来上がりが微妙に違うということになります。

玄米は完全栄養食といわれるほど栄養価が高い穀物ですが、表皮に水を弾く蝋を含む層があり浸漬(水浸し)に時間がかかります。保存性が高いという種子として優位な面もありますが、調理の簡便性からすると労力が必要になります。

稲は同じイネ科の麦やトウモロコシと違って籾が取りにくい性質があり、きれいな玄米の状態で流通できるようになったのは、工業技術が発達し効率よく取り除けるようになってからです。なので最近話題の玄米食が一般化したのは、現代になってからと思われます。精米技術が発達して白米が食べられるようになったといわれている江戸時代中期でも米は、分づきで食べるのが主流だっただろうという考えは合理性があると思います。

環境に合わせて進化するというダーウィンの理論を借りれば日本人の多くは分づき米に適応した消化器と体質を持っていると思われます。

どういう風に食べたら良いか

分づき米の炊き方に一般的な決まりはないので、どんなふうに炊いても自由です。ただ、どんな感じで食べたいかは人それぞれ。「柔らかく食べたいか」「かっちり歯ごたえよく食べたいか」献立や食味の好みあわせ工夫していただいたらいいと思います。

まずは、そのまま白米と同じように炊飯器で炊いてみてください。まったく違った食感と風味が味わえると思います。

分づき米は水に溶けずらい食物繊維が多く、炊く時には余分に水が必要です。なので一般的に電気炊飯器で炊く場合に白米の水目盛りより多くすると失敗なく炊けます。土鍋などガスコンロで炊く場合は白米の水加減の3から5割増しにすると上手に炊けます。

保存方法はどうすればいいのか?

分づき米に限らずお米の食味落ちの原因は

  • 水分の含有率が下がること
  • 空気中の酸素によってデンプンやたんぱく質、脂質が酸化する(温度が高いと反応が早い)こと
  • 保存環境にあるガス性の物質による匂い移り

が主です。保存の状態にもよりますが、長期に保存するときは注意が必要です。

玄米の状態ですと抗酸化物質が表面を覆っていますので、さほど神経質にならなくても大丈夫ですが、精米をしたお米は酸化と水分抜けし劣化してい行きます。劣化=美味しくない ということになります。

一番良い方法は食べるときに精米し時間を置かず食べきってしまうことですが、予め精米機を用意する必要があります。

空気を遮断できる容器に入れて保存すれば食味落ちを遅らせることが可能です。白米は胚乳の部分だけですのでほぼデンプンです。分づき米の場合は胚乳の表面に糠層が残っています。デンプンと糠の酸化のスピードが違い、油脂分の多い糠のほうが酸化のスピードが速く食味落ちも早くなります。空気に触れない容器に入れて温度低く湿度の高い場所に保存する方法がベストと言えます。